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2023.11.25

墨田はモノづくりの歴史。ワクワクする新商品。

墨田区は、都内屈指のモノづくりのまち。江戸時代から続く技術を継承する伝統産業や、金属加工業、石鹸等の化学メーカーやファッション産業まで、23区内トップクラスの多種多様な企業があります。そうしたものづくりに光をあて、行政がサポートしながら新たな地域ブランドづくりを行ってきたのが「すみだモダン」というプロジェクトです。
東京スカイツリー開業にさきがけて2009年に始まったすみだモダンは、数多くの魅力的な商品を生み出し、すみだ独自のブランド認証も実施してきました。
このプロジェクト担当の墨田区産業観光部の郡司剛英部長、ディレクターでありデザイナーの廣田尚子さん、そして、すみだ地域ブランド推進協議会理事長の水野誠一さんにお話を伺いました。すみだモダンのストーリー、前編です。

モノづくりのまちから生まれた「すみだモダン」。実はエシカル。

これは次の10年に向けて、廣村正彰さんがデザインしたロゴタイプです。廣村さんはサインデザインの第一人者で東京2020オリンピック・パラリンピック大会のスポーツピクトグラム開発チームの中心人物としても知られている。

すみだモダン、実はエシカル。

墨田区には長年技術を培ってきた企業が多くあります。でもこれまでは殆どが下請け企業でした。これではいけない、すみだをひとつのブランドにしようと、2008年、山崎前区長が水野誠一さんにすみだのブランディングを依頼したことから、すみだモダンは始まりました。

当時、日本各地で始まっていたご当地ブランディングは短命で、だいたい3年で終わっていたそうです。ところがすみだモダンは10年以上、今もまだ続いています。それは水野誠一さんが最初の約束として、最低でも10年続けて頑張ろうと言ったから。

もうひとつのミッションは、長年下請けをやってきた企業に、自社ブランドを生み出せる能力をつけること。

このふたつの約束は10年を過ぎて、今また次の10年に向かってリセットスタートしました。行政活動の設計として無駄なく持続可能になったので、サステナブルでエシカル、公益性の高い活動のモデルとなりました。

2021年度、墨田区は内閣府の「SDGs 未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」の、23区では同年度唯一のダブル選定を受けました。

IMA代表/すみだ地域ブランド推進協議会理事長 水野誠一さん。かつて西武百貨店社長として時代をリードする様々なライフスタイルを提案してきた水野さんと行政がタッグを組んだことが、ものづくりのまちに大きな変化を生み出すきっかけとなりました。「あうん(a・un)エシカル百科店」ではスーパーバイザーを務めています。

郡司:すみだモダンのスタート時点は、同じ部の産業経済課が担当。最初は、博報堂との協働で始まり、前区長とのお話もあり、水野先生にもご協力頂きました。その3年目の2012年に東京スカイツリーが開業。翌年の人事異動で、観光課長だった私が担当課長に。当時は、ちょうどこれが自走しようという時期。そこで水野さんに、引き続きこのプロジェクトにご協力頂けないかというお願いをして快諾を頂き、第一期すみだモダンのリスタート、ということになりました。

-行政が実施する地域ブランド事業で、10年を超えて継続しているものは、全国でもあまり例がありません。各地のブランド事業とすみだモダンとの違い、それは、他に類を見ない行政と地元企業との先進的な新しい関係づくりでもありました。

墨田区役所産業観光部長 郡司剛英さん。事業開始4年目からすみだモダンに関わってきました。

コラボで下請け脱却。

ヒロタデザインスタジオマネージングディレクターや、女子美術大学教授を務める 廣田尚子さん。

-すみだモダンでは、優れたモノをブランド認証する事業と、新たなものづくりを支援し、デザインやアイデアをアドバイスして、脱OEMの道筋を作る「ものづくりコラボレーション」という活動が大きな柱です。その事業にデザイナーとして関わり、現在はディレクターとして、デザインだけでなく仕事のやり方や企業のあり方までプロデュースされているのが廣田尚子さんです。

廣田:私は、モノづくりコラボレーションのスタート時に、デザイナーとしてお仕事をさせて頂きました。それから約10年、今度は、ディレクションする立場になり、まさに新しくもあり、懐かしくもある、という感じで、10年前に体験した私が、次の10年をどう変えていくかを考える機会を頂いたということです。

ーこれまでの印象的な体験を教えてください。

廣田:てのひらトングは心に残ってます。スプリングの会社である笠原スプリング製作所さんが作った、すっぽり手に入る可愛らしいトングです。

ーてのひらトングはパリの有名なセレクト百貨店「コレット colette」でも採用されたと聞きました。

廣田:そうなんです。それに、お花見のときに持っていってもらいたいね、と話したからなのか、桜の花びらの形です。機能性もばっちりだし、小さいし、使いやすくて、かわいいんです。

ー機能的なうえにかわいいなんて、フランス人が好きそうですね。

すみだモダン認証商品・笠原スプリング製作所の「てのひらトング」

郡司:すみだの企業は、モノづくりの腕はあるが、デザイン力がなかった。そこにコラボレーションによってデザイン力が加わるから、当然素晴らしい商品ができる。海外販路開拓にも取り組んだが、フランスのメルシーとかコレットなどのセレクトショップから、商品を扱いたいというお話が来ることもあった。やはりコラボレーターと作った商品は、そういう人たちの目にも留まりやすかったと思います。

ーIKIJIや廣田硝子や笠原スプリング製作所も、海外の方にも人気だと聞いています。これからは海外からの旅行客も増えるでしょうから、目に留めていただく機会も増えそうです。

「すみだモダン認証商品」を有している廣田硝子の「昭和モダン珈琲 BYRONグラス」
「すみだモダン認証商品」・IKIJIのスタイルがよく見えると評判の「肩で着る」ポロシャツ
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