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2024.04.19

ぬくもりあふれる木製品で子どもの健やかな成長を願う

次代を担う子どもたちへの最初の贈りものとして、市内で誕生した赤ちゃんに地域の特産品である木工品を贈る取り組みを続けている市があります。故郷を愛し誇りに思う気持ち、自然を慈しむ穏やかで豊かな心や人間性を育んでもらいたいという願いを込めた「ファーストウッド」は、宮城県北東部に位置する登米市のプロジェクト。森林が市の4割を占め、湖沼などが点在する自然豊かな市で、森の恵みに見守られるように、新たな命は地域の宝として成長していきます。


木のぬくもりに触れて育まれる豊かな心、故郷への想い

市内で生産されたFSC認証材を使用したファースト・ウッド(初めての木製品)のデザインは市内外からの公募で選ばれました。

登米市は2005年、登米郡9町の合併により誕生した市。仙台から高速道路で1時間ほど、約7万4000人の住民が暮らす街は、北上川の流れのもと、総面積の約4割を占める森林は重要な資源となっています。

そんな木のまち、森のまちで生を受け、次代を担う子どもたちに向けて、登米市では「木育」を提唱しています。市内産の木材でつくった木製品を、赤ちゃんがはじめて触れる木製品「ファースト・ウッド」として、新生児一人ひとりに贈ります。

子どもの頃から木や森とふれあうことで、健やかに、心豊かに成長してほしい。そして自分の生まれた地に誇りをもってほしい。やがては自然を愛し、環境に配慮できる人になってもらいたいという願いが込められています。

また、伐採を進める必要がある地域産コナラ材を天板とした机を製作し、市内すべての小中学校の机、6200台の入れ替えも実施。地域林業の活性化を図ると同時に、若い世代に森や木工品に親しんでもらう活動も進めています。

市民参加の森林づくり植樹祭「わたしの記念植樹」では、市民が自分の想いを標柱に記して植樹。木の成長とともにそれぞれの歴史を刻む取り組みとなっています。

登米市で育つ子どもたちは、森の恵みに見守られるようにして成長していくのでしょう。


地域の森を活用した社会貢献

持続可能な林業の推進と、木材を活用した社会貢献に向けてさまざまな取り組みを展開

登米市の森のほとんどは民有林。そのうち、スギやヒノキ、アカマツといった人工林が約7割となっています。国産材の一大供給地であり、間伐材を活用した木工品や家具などの生産も盛んです。

林業の推進にあたり力を入れているのが、FSC森林認証の取得です。FSC森林認証は、責任ある森林管理や持続可能な森林経営が行われている森林を認証する国際的な森林認証制度のこと。登米市では市と森林組合等で登米市森林管理協議会を設立し、市内森林の認証を取得しています。ファースト・ウッドとして贈られる木製品も、もちろん環境配慮の証であるFSC森林認証を受けた木材です。

また、地域資源を活用しての社会貢献も積極的に行っています。たとえば東日本大震災では木造仮設住宅や災害公営住宅の建築、木材提供に取り組みました。

2020東京オリンピック・パラリンピックの選手村の建築にもFSC認証材を提供しています。大会後は選手村が解体され認証材が返還されたため、公募によって選ばれたデザインによる作品としてテーブルinチェアーを製造。オリンピックレガシーとして、市内各所で市民に利用されています。このように、地域として社会貢献や環境配慮への活動が受け継がれていくために、市民や市外への認知を広めていくことも大切だと考えているそうです。


森林地域でなくても、個人でも木材使用での環境配慮はできる

林業を取り巻く状況にはさまざまな課題もあり、同時に、森林や林業を守るためのシステムもいろいろ展開されています

登米市では、市民が市内産木材を活用した住宅を建築したり、木質バイオマス燃焼機器を設置したりする市民への補助金を交付なども実施。環境省が進めるオフセットクレジット制度(J-VER/温室効果ガス排出削減・吸収量をクレジットとして認証・発行する制度)で認証を受けたクレジットの販売を進めるなど、地域内にとどまらず、森林資源を生かして環境負荷の低減に広く協力する取り組みも展開しています。

こうした取り組みは、どんな地域でもそれぞれの方法で進めていけることです。そして、個人でも森林や環境を守る数々の制度を知ることによって、自分が手にする製品を選ぶ際に、環境に対する配慮のある製品を選べる可能性が広がります。自分が知った情報を周囲に伝えることもできます。

それぞれの立場で発信すること、受け取ることの両面でできることがあり、それによって何かを変える一歩を踏み出せることもある。登米市のさまざまな試みは、そんなことに気づかせてくれるような気がします。

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