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2024.06.05

生活に寄り添う良理道具の開発にかける、釜浅商店の思い

明治41年創業、浅草合羽橋に店を構える料理道具店「釜浅商店」。

店内には、釜浅商店がセレクトしたプロ御用達の料理道具をはじめ、私たちの生活に寄り添う優れた料理道具が並びます。

熟練の職人が手掛ける道具に釜浅商店のエッセンスを加え、オリジナル商品の開発も行う釜浅商店の仕掛け人である和田洋一さんに、商品開発への思いや、良い道具と長く付き合っていくために大切なことを伺いました。前後編にわたってお届けします。

※後編はこちら

手にとった瞬間から、良理道具との付き合いが始まる

和田さん「販売において、お客様が道具を購入して終わりではなく、その瞬間から道具との付き合いが始まると思っています。なので、接客の際はお客様にとって最良の選択肢をきちんと説明するようにしています。」

釜浅商店 ゼネラルマネージャー 和田洋一さん

料理をする目的や環境によって、その人にとってのベストな料理道具は異なります。プロの料理人が使う最高品質の道具が、必ずしも日々の生活の中で使うのに最適とは限りません。和田さんはこれまでの経験を活かし、お客様との対話を通じて最適な選択肢を見出せるように意識しているといいます。

販売の延長に、商品開発がある

職人の技術と釜浅商店のエッセンスが融合したオリジナル商品は、多くの人を魅了しています。一体それらは、どのようなプロセスを経て実現しているのでしょうか。

和田さん「これらのオリジナル商品は、ゼロから生み出しているわけではありません。今では看板商品になった釜浅の鉄打出しフライパンも、元々当店で取り扱っていたメーカーさんの商品がもとになっています。

店頭に立っていると、『フライパンが欲しい』と店を訪れた人に商品の魅力を伝えても、購入に至らないことがあります。その度に「何故だろう」と考えるんですね。殆どのお客様は買わなかった理由を声に出さないので、想像力を使いながら、会話の中から買わなかった理由を丁寧に汲み取っていくことが大切です。その作業を積み重ねた結果、お客様の隠れたニーズが紐解けたと思ったときに、釜浅商店のオリジナル商品が生まれます。

オリジナル商品は多岐に渡りますが、並ぶと釜浅商店らしさを感じます。この「らしさ」はどうやって形作られているのでしょうか。

和田さん「商品開発をする際には、まず絶対に譲れないポイントを決めます。フライパンを例に挙げると、素材ひとつとってもアルミやテフロンなど多岐にわたる選択肢がありますが、私たちは鉄製であることにこだわりました。蓄熱性や耐久性などの観点から、料理道具として最も理にかなった素材だと考えているからです。その土台があった上で、お客様との会話から得たヒントを取り入れながら、どのような商品に仕上げいくかを検討していきます。」

気軽に使える人を増やしたい

時代が変化するに伴い、使い手のニーズも変化していきます。その中で和田さんは、良い道具の基本的な要素は変えずに、変化するニーズを汲み取りながら開発を進めています。

和田さん「例えばフライパンの場合、現在はIH対応の需要が増えているので、そういったニーズに応えられるよう、IHで使えないものは作らないようにしています。このように、現代の人々のニーズに応えながらアレンジしていくことも重要だと考えています。せっかく良い商品ができても、使えない状況があることは避けたいですからね。」

使える人を増やすこと——古くからの道具は、ある人にとっては使い始めるまでのハードルが高いことも少なくありません。和田さんは、お客様が道具を使うことに対する抵抗をなくしたいという考えを持ち続けています。

和田さん「例えば、今ではおひつを使っている人は非常に少ないと思います。一方で、炊き立てのご飯をおひつに入れると格段に美味しくなるのも事実なんです。残ったご飯をタッパーやラップで保管する人たちにおひつを使ってもらいたいと思い、冷蔵庫にも入れられて、電子レンジでも使えるおひつを作りました。このようにして生まれた『釜浅の曲輪おひつ』は、これまでの「めんどくさそう」や「使いこなすのが難しそう」というイメージを覆す道具となりました。」

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